- f韓国で130万部を売り上げ、大ベストセラーになった「82年生まれ、キム・ジヨン」が日本でも10月9日から全国で公開されることになりました。
女性なら誰でも起こりうる内容が共感を呼んだのかもしれません。
フィクションなのに、まるでノンフィクションかのように感じてしまいます。
「82年生まれ、キム・ジヨン」原作あらすじ
2015年、キム・ジヨンは33歳。
結婚して夫のデヒョンと1歳の子どもと3人暮らしです。
出産前までジヨンが広告代理店で働いていましたが、出産を機に退職しました。
物語はある朝ジヨンに異変が起きるところから始まります。
それはまるで、ジヨンに身近な誰か(お母さんであったり、過去の友人であったり)が憑依しているかのようでした。
ジヨンが他人になりきっている時、ジヨンの記憶はありません。
その様子を見ていた夫デヒョンが精神科に訪れ、ジヨンがカウンセリングを受けて過去を振り返ることで物語が進んでいきます。
ジヨンが抱える闇の部分、「女性が生きていく上で感じる生きづらさ」について描かれている、少し重めのテーマです。
キム・ジヨンの子ども時代~社会人時代
ジヨンは1982年生まれ。父と母と姉と父方の祖母と暮らしています。
ジヨンが生まれた80年代の韓国では「産児制限政策」を展開し、「産むなら男の子」だという風潮があり、女の子の堕胎が多く行われていました。
ジヨンの母も3人目を身ごもりましたが、女の子であることがわかったため、堕胎を決意しました。
その数年後に5歳下の弟が生まれます。
男の子である弟はすべてにおいて「特別待遇」でした。
キム・ジヨンの幼少期
幼い頃から、少しづつジヨンは社会に対して違和感を覚え始めます。
例えば、
- 炊きあがったばかりのご飯は父親、弟の順に配膳されること
- 出席番号は男の子から始まること
- どんなに頑張っても女の子は学級委員にはなれないこと
キム・ジヨンの学生時代
中学や高校に入学するとキム・ジヨンの違和感は増えていくばかりです。
男子より女子の方が校則が厳しかったり、見知らぬ男子生徒にストーカーされても自分が叱られたり。
大学生になっても男子優遇というのは変わりません。
就職活動の時には、学校から推薦されるのは男子学生です。
面接試験ではセクハラまがいの質問もありながら不採用になります。
卒業式2日前になっても就職が決まらず、父親からは「嫁にでもいけ」と言われてしまいますが、その日のうちにようやく広告代理店からの採用通知が届いたのでした。
キム・ジヨンの社会人時代
広告代理店で働いているジヨンの上司にウンシル課長がいます。
女性の課長です。
ウンシル課長には小学生の子どもがいます。実家の母親と同居し子どもの面倒を見てもらっています。
「女性はこれだからダメなんだ」と言われないように、残業や出張など日々奮闘してきました。
これからの女性社員のために道を切り開いている人です。
憧れのウンシル課長がいる新しいプロジェクトにジヨンも入りたいと希望を伝えますが、選ばれたのは男性社員でした。
その後、同期の仲間たちと飲み会があり、ジヨンは愕然とする事実を知ってしまいます。
- 新しいプロジェクトには結婚や出産で辞める可能性がある女性社員を選ばなかったこと
- 男性社員の方が年棒が高かったこと
キム・ジヨンの結婚や出産
キム・ジヨンはデヒョンとの結婚後も仕事を続けます。
そうなると周囲からは「子供はまだか」との声が上がってきます。
子どもが出来ないのは、「ジヨンに問題がある」との決めつけです。
そんな声をかき消すには「子どもを作るしかない」とデヒョンはジヨンに言います。
子どもを産むことで失うものがジヨンの頭をよぎりました。
社会とのつながり、仕事を辞めなければいけない、健康面の心配など。
出産で失うものがあるのは女性ばかり
妊娠するとぶつかる壁
子どもを授かったおかげで周囲からの「心なき声」は一旦なくなりました。
ですが、次から次へと壁が存在します。
妊娠中の電車通勤は危ないこともあり、周囲の女性からでも嫌味を言われます。
危険を避けるために時間帯をずらすと、今度は男性社員から嫌みを言われます。
子どもができないと嫌みを言われ、出来たらできたでまた嫌みを言われる日々。
そして、お腹の子が女の子だとわかった途端に「次は男の子を」という声が上がってきます。
結局ジヨンは出産を機に会社を退職することにしました。
残念ながら今の日本でもあるあるかもしれませんね。。
育児期間にぶつかる壁
キム・ジヨンの子どもが1歳になる頃、ジヨンは子どもを保育園に預けて仕事復帰を考えます。
保育園のお迎えのとき、公園でコーヒーを飲んでひと息ついていた時、ジヨンは近くに座っていた男性たちから「旦那の稼ぎでコーヒーを飲んでいる。ママ虫」と言われてしまします。
韓国では2013年頃、保育園の全面無償化が始まり、保育園に預ける人がおおくなりました。
保育園に預けている若いお母さんたちを「子育てもろくにしないで遊んでいる」と言う目でみることがあったそうです。
たった150円のコーヒーを飲んだだけで罵られる現実に、ジヨンはショックを受けてしまいます。
「自分には150円のコーヒーを飲む価値もないのか・・・」
ジヨンに起こった異変はこの事がきっかけだったようです。
「82年生まれ、キム・ジヨン」のラスト
医師の診断は「鬱」とのこと。
ジヨンが感じる社会の理不尽さや違和感が根底にあるようです。
結論(ネタバレ)から言うと、原作のラストでは症状は落ち着いてきているけれど、治療は継続中です。
精神科の男性医師には元眼科医の妻がおり、優秀ながらも「子供がいる」ことが一番の原因となり仕事を辞めた経験があります。
女性の生きづらさを身近で見ていることもあり、ジヨンのような社会における女性の生きづらさには理解があると自負しています。
そんな時、ジヨンを理解しながらカウンセリング続けている医師の元に、妊娠中のスタッフが退職の挨拶にきます。
女性スタッフに労をねぎらいながら、心の中では出産で仕事を辞める事に快く思っていません。
ですが、一方で育児をしながらの仕事は大変であることを考えています。
そして男性医師は、次のスタッフには「育児の問題がない」未婚のスタッフを雇おうと決めます。
*原作者はこの結末について
公式な場で女性に理解があっても、個人の利益にかかわる問題になると、その判断がしばしばかわることがある。と話しています。
「82年生まれ、キム・ジヨン」の感想
韓国で「82年生まれ、キム・ジヨン」が出版されたとき、かなりの反響があり、賛否両論が巻き起こったようです。
テーマが重く、結末もスッキリと終わらない「女性の生きづらさ」にフォーカスを当てている内容でした。
「82年生まれ、キム・ジヨン」に起こった出来事は、国が違ってもほとんどの女性が経験していると思う代表的な事柄が多かったと思います。
本を読んだ人の口コミを見ると、
共感する部分が多く読んでいて辛かったと感じる人や、結婚を機に仕事を辞める事ができて良かった、という人もいました。
ですが、80年代の韓国では、日本人が想像するよりもっと厳しかったのかな。
という印象も受けました。
感じ方は人それぞれだけれど、キム・ジヨンのように「悲観的にならないで生きていく」考え方も書いてあると良かったなぁ、と思います。
「82年生まれ、キム・ジヨン」まとめ
- 「82年生まれ、キム・ジヨン」は女性のフェミニズムを扱った小説です。
- 生まれた国に関係なく、女性が生きていく上で感じる「あるある」が共感を呼びベストセラーになりました。
- キム・ジヨンという架空の人物なのに、まるで現実に存在しているかのように描かれています。
- キム・ジヨンが生まれた80年代よりも、女性に対する理解が進んでいるが、個人の利益に関することになるとその判断基準がかわることが今でもある
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