天堂晋助著「ユカ」を紹介します。
著者の歴史冒険小説を読んだことがあり、とても読みやすいという印象を持っていました。
関連書籍を調べてみると歴史ものの他、都市伝説系など幅広いジャンルの小説があります。
その中で今回紹介する「ユカ」は、タイトルと表紙から見ても歴史冒険小説とはかけ離れた恋愛もの。
今回は「ユカ」についてあらすじや感想と著者の関連書籍についてもまとめました。
天堂晋助著「ユカ」の紹介!
ユカは実話がベースになっている作品です。共感を得られるところがあるかもしれませんね。
著者のプロフィールから紹介していきます。
著者天堂晋助氏プロフィール
埼玉県出身で会社員をしながら執筆活動をされていました。
安原顯氏の創設した創作学校で小説を学ばれ、創作学校にて優秀賞受賞しています。
学研主催の第2回歴史群像賞で奨励賞を受賞したのをきっかけに会社員を辞め執筆活動に専念されたとのこと。
2002年の作品である「秦始皇帝と暗殺者」は、日本図書館協会選定図書となっています。
会社員から作家に転身されたのは心の中にある何かもやもやしたものを表現という形で外に出したかったからということで、今までに多くの作品を出版されています。
誰もが楽しめる小説を書くのが目標で、歴史小説に関心がない人にも面白いと思ってもらえたら嬉しいという熱い想いがあります。
著者は常々「人間の本性をえぐり出す」ということを意識して執筆活動をされており、実話がベースの今回の作品はまさに「人間の本性」が描かれた作品になります。
ユカのあらすじ
ユカの時代設定は1980年代後半から1990年代初め頃まで。
当時10代後半~30代だった女性に特に刺さる内容だと感じています。
令和の時代になった今振り返って見ると「結婚」という言葉は、あの頃の女性にとって一種の呪いの言葉だったなと思う作品です。
二部制で楽しめる作品
ユカという物語は一部と二部に分かれています。
一回別れるまでの「青春篇」。再度つきあうことになる「復讐篇」。
復讐といっても血みどろの殺し合いではありません。
見えない糸に引きずられた男女の終わりが見えない?「縁」が描かれています。
付き合って喧嘩して別れて・・そんなカップル身近にいましたよね。
ただ、Amazon紹介記事にも「僕の恋人は精神病院に入院していた」とありますので、若い頃の恋愛を問題なく過ごしてきた人には主人公2人の恋愛は重く感じるかもしれません。
80~90年代の結婚感(女性側)
「結婚」という言葉が女性を狂わせる。あの時代「結婚」に捉われて不安定になる時期が女性にはあったように感じます。
当時、世間的に24歳~25歳が結婚適齢期と言われていて、24歳だったらイブ婚、25歳だったらクリスマス婚と例えがあり、その年齢を過ぎたらクリスマスケーキに例えて「売れ残り」とされていました。
その年齢に近づくと周囲から悪意のない煽りを受けるんですね。
ヴァンサンカン・結婚というドラマもあったほど。(ヴァンサンカンは25)
世の中全体が女性は25歳までに結婚しなければダメという雰囲気だったんです。
この見えない圧力から逃れるために彼氏を探し、結婚にたどり着いた人は安堵し、24歳で彼氏もいないとなるとそれはもう・・本人も焦りや不安、周囲の何気ない同情の目などが誇大して感じられるようになり、精神的に辛い状況になる人もいました。
本書の主人公ユカは登場当初すでにその年齢を超えていましたし、不倫をしていましたから精神的に不安定でも仕方がなかったのかなと感じています。
この時代の恋愛・結婚感を頭に入れつつ読んでもらえればと思います。

令和の今から考えると想像もつかないですよね。
ユカ概要
天堂晋助著「ユカ」は全十二章で構成されています。
- 第一章:すべての始まり
- 第二章:仕事と小説
- 第三章:楽しき日々
- 第四章:破滅への道
- 第五章:別れ
- 第六章:会社を辞めるまで
- 第七章:洋子と創作学校
- 第八章:初めての本
- 第九章:再びユカと
- 第十章:狂気
- 第十一章:病院へ
- 第十二章:すべての終わり
著者:天堂晋助
本の長さ:204ページ
kindle価格:480円(税込み)
ペーパーバック:1320円(税込み)
発売日:2023年11月30日

ひと味違ったハラハラが感じられ
なんでーっと突っ込みどころもある内容です。
ユカの感想と著者の関連書籍
「ユカ」は、とある男女2人の恋愛模様が綴られたストーリーで、読者にしてみると自分と重ねてみたり知人と重ねてみたり、ドラマを連想してみたりする作品ではないでしょうか。
考えさせられる
付き合ったり別れたりするカップルは自分の周りにもいましたし、会えばケンカばかりしているというカップルもいました。
ユカの主人公2人の場合、何らかの強い縁で引き合わせられたかのような感じがしましたね。出会うべくして出会ったというような。
自分だったらどうしたのか?
女側目線で考えると、元々不安定な感情がある人に結婚という呪縛が作用してしまったのかな?と考えたりしました。
精神的に強ければ既に違う人生だっただろうし。
そして私が男側だったらとっとと逃げたかもしれない。果たして逃げられたのだろうか。
主人公の男性は弱い女性を放っておけないタイプだったのか。でも、その優しさは本当は優しくないんだよ。。とか、とにかくいろいろ考えさせられます。
結局のところ、彼らは見えない何かに引き寄せられたんだろうなぁ、と結論づけるしか出来ませんでした。
あっけない終わり
ユカのラストはものすごくあっけなかったです。
あまりにも簡単な別れにひょっとして「復讐編」というだけに、ユカはすべてわかってて男性を振り回していたのかと勘ぐってしまうほど。
振り回すだけ振り回して「もうこの辺でいいや」って感じ?
結局2人のその後はどうなったのか。
ユカは元気でやってるのかな?根本さんは良い人と巡り会えたのか、それとももう恋愛に疲れてしまったのだろうか。
この先は読んだ人の想像で何通りものストーリーが出来上がります。
私はそれぞれが「強い縁」から解放されて幸せを掴んでいるだろうな、と考えます。
天堂晋助氏の関連書籍
「ユカ」の中に登場した「都市伝説」はおそらく以下の作品。
なるほど「都市伝説」はこうやって完成したのか、と創作の裏側が見えたのも面白かったです。

都市伝説百物語は1~3巻でそれぞれAmazonで購入できます。
怖いものがお好きな方、自分が知ってる都市伝説が載ってるか確認してみるのも面白そうです^^
まとめ:天堂晋助著「ユカ」の紹介!あらすじと感想や関連書籍についても
天堂晋助著「ユカ」を紹介しました。
歴史冒険小説が多い天堂晋助氏の作品の中で、実話をベースにした恋愛小説でした。
一般的なハッピーエンドが期待できる作品ではなく、著者が求める「人間の本性をえぐり出す」そのものだったと思います。
縁ってすごいなとか、見えない力には逆らえないんだなとか、自分だったらどうしたのかなど、色んな場面を想像しながら読める作品です。
あまりにもあっけないラストは、それがまた彼らのその後を考えたりして読了後も頭の中は「う~ん」となってしまうのではないでしょうか。
天堂晋助著「ユカ」はAmazonで購入できます。
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疾走する狂気の愛。二人はいったい、どこにたどり着くのか
僕の恋人は精神病院に入院していた。もう二十年以上も前の話だ。
当時、彼女のために何ができるだろうか、と僕は考えた。
僕は書くことにした。書いて彼女とともに苦しもうとした。これはそのときの記録だ。
同じ会社に勤める彼女に、僕は指輪を渡した。彼女は僕より九つも歳が上だ。そして副社長の姪だった。
「一年後の今日。俺はユカに結婚を申し込むよ。この指輪は婚約の印と思ってくれていい」
この日からユカとの正式な付き合いが始まる。すべてのスタート地点。呪われた運命の始まりだった。